彬子女王殿下御言葉
全国氏子青年協議会創立五十周年記念式典
本日ここに、全国氏子青年協議会創立五十周年記念式典が盛会裏に開催されますことを、まことに喜ばしく思います。
このたび、この席で御挨拶させていただくにあたり、三十五周年記念式典で、父が述べられたお言葉を目にする機会がございました。
父は、「神社はかつて青少年教育の場であり、伝統文化継承の場であった。子供たちはそこで自然への慈しみやものの大切さを学び、畏敬の念を学んだ」という、当時神社本庁研修室の葦津敬之氏の言葉を引用され、「鎮守の森が日本人の心の拠り所であることに思いを致し、敬神崇祖の伝統精神を子々孫々に正しく継承することの重要性を認識することが望まれます」と述べておられます。
神社やお寺を舞台に、子供たちに日本文化を伝えていくワークショップを開催することを主体に活動する団体「心游舎」を私が発足させて丸二年が経とうとしておりますが、父が十五年前におっしゃっていたことを知らずしらずのうちに体現できていたことを、とても嬉しく思いました。
この心游舎の活動を通して、この二年間、たくさんの神事を学ばせていただいておりますが、毎回多くの氏子さんの御家族の皆様がワークショップに参加してくださっています。
笑顔で境内を走り回っている子供たちを見ると、強制ではなく、自然と神社に親しみ、親子代々で神社を大切に思われていることが伝わってきます。
心游舎は、大宰府天満宮幼稚園で、お菓子づくりのワークショップを開催させていただいていますが、子供たちに、毎回たくさんのことを教わります。そのなかで、私が感銘を受けたことの一つをお話ししたいと思います。
天満宮幼稚園の子供たちは、毎朝、園旗に向かって一礼をし、天神様のおられる方向に向かって手を合わせ、揃って「わたしたちのちかい」を唱和いたします。
一つ、かみさまをうやまいます
一つ、きょうどとくにをあいします
一つ、きまりをよくまもります
一つ、たのひとびとをたすけます
一つ、からだをつよくします
一つ、きれいなこころをやしないます
一つ、ものをたいせつにします
一つ、ひとにめいわくをかけません
一つ、ごおんをわすれないようにします
この姿を初めて見たとき、自分がいかに、この大切なことを考えずに生きているかを実感し、冷や水を浴びせられたような思いがいたしました。
ごく当たり前のことなのに、大人になると、この子供の頃に習った精神をつい忘れがちになっているような気がします。
「わたしたちのちかい」には、日本人として忘れてはならないことのすべてが、端的に表されています。
これは全国の神社を支える氏子の皆様も心に留め置く一つであるものと思います。
この五十周年の節目の良き年に、全国氏子青年協議会の会員の皆様お一人おひとりが、子供の頃に過ごした神社の思い出と原点に立ち返り、今後の協議会がより一層発展していきますことを祈念いたします。